リアルドロップシッピングとは?~リアル帝国の繁栄と暴政
皆さんはリアルドロップシッピングをご存じでしょうか?数年前からドロップシッピング(以下:DSと表記)をしている人はもちろん知っているしょうが、これからはじめる方は知らないのではないでしょうか?
リアルDSとは、2006年7月に国内最初の物販系DSとして提供されたドロップシッピングサービスです。サービス提供当初からものすごい勢いで会員数を伸ばし、一時期はドロップシッピングサービスプロバイダー(以下:DSPと表記)の中で最大規模の会員数になりました。
リアルDSの特徴は、完全無料でお店(ネットショップ)を作ることができたことです。当時、このサービスはかなり画期的だったことから、多くの方がリアルDSをはじめました。
そして、S.Sを含め100万円以上の売上げを上げるドロップシッパーが続々と登場したリアルDSは、一過性の人気に終わらず儲かる副業サービスとして、人気を集め続けました。会員数はさらに増え、リアルDSを利用して作られた店舗数は数年で十万を超えました。しかしその頃から、ドロップシッパーはリアルDSの暴走に戸惑うことになります。
メアドがぶっ飛んだ
2008年2月頃にリアルDSはサービスの大きなバージョンアップを行いました。サービスがよくなることに喜んでいたドロップシッパーたちでしたが、結果は散々なもので、多くのドロップシッパーが悲嘆にくれました。なんと、リアルDSは、購入者のメールアドレスをデーター消去したというのです。しかし、後日さらに追い打ちをかける真相ともいうべき出来事が待っていたのです。
ドロップシッパーは、自分の作成したお店で会員となったお客様に、作成した店舗名でメール配信することが可能だったので、売れ筋商品を購入者へメール配信するだけで稼ぐことができました。
それは、DSPの大胆不敵な行動で発覚しました。数週間後、リアルDSは、リアルマーケット※1名義で購入者にメール配信をはじめ、自社の作成したお店へ誘導をはじめたのです。もちろん、メールから売れた金額はドロップシッパーには還元されませんでした。
※1 リアルマーケットとは、DSPが作成したリアルDSで取り扱う商品を全ておいたお店のこと。
S.Sはリアルマーケットで商品を購入して会員になっていたためリアルマーケットによるメール配信に気付きましたが、多くのドロップシッパーは気付かなかったかも知れません。
沸々と怒りがこみ上げてきました。「メール配信するなら、お客様のことも考えて、購入したサイトに誘導してはどうですか?」と怒りをこらえ助言しましたが、S.Sの声は届きませんでした。
サービス有料化
2008年9月にリアルDSは、残念なサービスの改定を実施しました。以下のような有料化にふみきったのです。
- 20商品プラン・・・利用料金:無料、商品点数:20商品
- 50商品プラン・・・月額利用料金:500円 商品点数:50商品
- 100商品プラン・・・月額利用料金:1,000円 商品点数:100商品
- 300商品プラン・・・月額利用料金:3,000円 商品点数:300商品
- 500商品プラン・・・月額利用料金:5,000円 商品点数:500商品
- 1,000商品プラン・・・月額利用料金:10,000円 商品点数:1000商品
その後、若干の各プランの値下げはあったもののドロップシッパーは愚痴をはいていました。以前は楽しい会話が飛び交うドロップシッパーの集いも、愚痴の場となっていきました。S.Sもこの改定には怒りそして泣きました。
エンドユーザー※1からだけでなく、ドロップシッパーからもお金を取り、毎月確実な収益を上げようと考えるDSPの腹黒さがしっかり見えたサービス改定でした。S.Sをはじめ、多くのドロップシッパーの「有料化はやめてください」の声は届きませんでした。
※1. ドロップシッパーのサイトから商品を購入してくれるお客様
マスク事件勃発
新型インフルエンザが大流行した2009年。2度にわたるマスク景気なるものが勃発し、ドロップシッピング業界は沸きに沸いた。
第1次マスクブームは、2009年初頭に起こりました。当時S.Sは某企業での仕事が忙しく、このマスク景気に乗れず、傍観者となるしかありませんでしたが、多くのドロップシッパーがかなりの売上げをたたき出しました。
S.Sは、売り逃したなと思い夜な夜な泣いていました。しかし、マスクブームはもう一度くると考え、その時に備え、マスクサイトをこつこつと作成しました。
そして2009年の冬、遂に来た!第2次マスクブーム!「マスク」「マスク」と寝ても覚めてもマスクのことを考えて過ごした数日間。がっつりやりました。売れに売れたマスク!S.Sは、やりきった思い出感無量でした。しかし、第1次マスクブーム以上に売れた今回、思わぬ落とし穴が待っていたのです。
サーバーがダウンしたりするのは前回のブーム時もあったそうですが、今回大問題となったのは、DSPが在庫がないのにマスクを売っていたことです。知り合いのドロップシッパーが「在庫大丈夫なんですか」と確認を取った際、「大丈夫ですのでどんどん売っちゃってください」との返答だったそうです。しかし、実際には在庫はなく、次の入荷日まで数カ月という事実が判明しました。このことは、ドロップシッパーをはじめ多くの人に多大な損害をもたらしました。
まず、ドロップシッパーの売上げはぬか喜びとなりました。注文キャンセルが殺到したのです。中には、全注文の半分以上がキャンセルになったドロップシッパーもいました。
さらに、リスティング広告(マスク宣伝費)に膨大な経費を使い、度重なるサーバーダウンと注文キャンセルで赤字になった人も続出しました。リアルDSのコミュニティはもちろん、多くのブログで怒りの声が持ち上がりました。
S.Sは広告費はあまり使わずに、マスク関連の検索キーワードで検索上位表示をキープしていたためかなり儲けました。
そして、一番の被害者は商品を購入した消費者でしょう。S.Sも自宅用にマスクを買ったのですが、その値段は普通じゃ考えられない価格でした(当時S.Sは馬鹿なので通常のマスクの値段をあまり知りませんでした)。
いくら需要がすごいからって、いつくるかわからない状態が続き、やっと来たと思ったら、ぺらぺらマスク。それが1万円オーバーの値段ともなれば、それは怒るでしょう。消費者センターへの苦情も殺到したようです。
この2度のマスクブームはDSの歴史の中で、それまでの最高の売上げ記録と、大クレームを引き起こす大事件でした。S.S含め多くの人がかなりの報酬額をたたき出した一方で、損害を被った人も多くでました。しかし、後者の出来事は闇に葬りさられ、DSは儲かるものだとして、リアル帝国はますます繁栄していきました。
一方で、もしもDSは、マスクの注文キャンセル分の報酬金額も、ドロップシッパーに還元してくれるという、神対応をしてくださいました。ありがたや!
楽天決済導入
2009年10月26日、リアルDSは大きなサービスのバージョンアップを実施しました。楽天決済システム※1をリアルDSの店舗でも利用できるようにしたのです。正直、S.Sは、ドロップシッパーとしてのメリットを感じられなかったので、楽天決済導入には以下のような点で反対でした。
- ドロップシッパーへの報酬が引かれる
- 楽天でもないのに楽天決済が使えるという複雑な仕組み
※1 大手ショッピングモール楽天市場で使用される。 楽天銀行の口座をお持ちの方が使える決済方法のこと。
1.ドロップシッパーの報酬が引かれる
楽天への手数料は異常に高く、楽天決済を使ってお客様が商品を購入すると売上げの7%分がドロップシッパーの売上げ報酬金額から引かれました。
例えば、販売価格2,980円、報酬金額500円の商品があったとします。この商品を代引きやクレジット決済でお客様が購入した場合、ドロップシッパーは1つ商品を売る毎に500円の報酬を得ることができました。しかし、楽天決済をお客様が選択した場合、ドロップシッパーに支払われる報酬金額は、500円から「楽天決済手数料」の209円が引かれた291円しか入ってこなくなったのです。
そもそも、今まではドロップシッパーにクレジット決済手数料を課していなかったのに、楽天決済にだけ手数料をとるというのは納得し難いことです。
ちなみに、リアルDSが課した楽天決済手数料7%といものは一般的な決済手数料と比べて異常に高いものです。S.Sは楽天市場に法人として出店したことがあるのですが、楽天決済手数料をはじめ、決済処理にかかる手数料は3%前後であったと記憶しています。
2.楽天でもないのに楽天決済が使えるという複雑な仕組み
一般的に楽天決済というものは、楽天市場で使える独自の決済システムであると理解されています。それなのに楽天市場以外で楽天決済ができるショップがあることは、お客様の混乱を招きました。
楽天市場で楽天決済を利用していたお客様は、便利にはなったかもしれません。しかし、楽天市場を利用したことがないお客様にとっては複雑になっただけだったでしょう。ネットショッピングが大好きなS.S的にもリアルDSの決済システムは使いずらいものでした。
まとめ
楽天決済の導入には、次のような目的があったのではないかとS.Sは推察します。「楽天決済可」と謳い、あたかも楽天出店店舗かのように偽れば、楽天ブランドの信用で売上げがのびる。ドロップシッパーに課す楽天決済手数料を高く設定しているので、今までよりも商品が売れた時のDSPの利益の取り分が多くなる。よって、これはDSPがより多くの利益を搾取するための企みではなかったのではないかと考えられます。
リアルDSは、楽天決済導入によって、ライバルのもしもDSとの差別化をはかろうとしたのかもしれません。しかし、そんなことはドロップシッパーにとってどうでもいいことだったでしょう。
震災で注文殺到
2011年3月11日、東日本大震災が起こりました。多くの方が被害にあい、亡くなった方も多く出た、本当に悲しい出来事でした。S.Sは地震が起こった時、自宅でスポーツジムに行く支度をしていました。突然、マンション全体が動くような地震が数分間に及び襲ってきました。ようやく揺れも落ち着いて、ほっとしたS.Sは、なにをしたかというと、おバカなのでスポーツジムに予定通り行きました。
途中、家族や友人に連絡を取ろうとしたが携帯は通じませんでした。スポーツジムに行く途中、崩壊したビルがありました。「すごい」と思ったが、そのままスポーツジムにS.Sは向かいました。スポーツジムに到着したら、入口から多くの人が避難してきました。中には、バスタオル姿の人もいました。天井が崩落したようです。S.Sはこの時、本当にすごい地震だと思ったが、まだ事態の大きさを把握しておらず、誘導に従い公園に避難しましたが、ここにいてもしょうがないと思い、すたすたと家に帰りました。
家に着いたら、彼女(現妻)から「大丈夫」との連絡がありました。スポーツジムに行った話をしたら、「馬鹿なの」といわれました。以上余談でしたが、本当に大混乱が起こった日でした。
そして次の日、震災の混乱の中、ドロップシッピング業界に予想だにしなかった需要が勃発しました。まず、震災の不安から全国でペットボトルの水などの大量買いがおこり。一瞬にして、街からを生活必需品が消えたのです。消費者は水などの確保をネットショッピングに求めました。リアルDSでは、大量の水を販売し飛ぶように売りました。全く無名ブランドの水であろうと即納できるなら売れました。
次に、福島原発の問題が露呈し全国に電力不足による計画停電の話が持ち上がりました。多くの方が停電に備えて、懐中電灯、ランタン、電池を必要としました。DSでは、飛ぶように停電対策グッズが売れました。ものすごいアクセスによってサーバーダウンも度々起こりました。
今回の震災での注文殺到においても、水、震災対策グッズ、停電グッズの納期での混乱がマスク同様起こりました。この辺のことはDSPがしっかりしていただきたいです。震災時は皆わらわもすがる思いで商品を購入しています。利益追求だけを考えず、しっかりとした対応をしていただきたかったです。
一時期の伸びはなくとも、稼げるリアルDS
その後は目立った需要もなく、小型カメラや美容健康グッズなどの定番商品を売ることがDSの主流となっていきました。大きな需要の波がなくとも、ドロップシッパーは着実に売上げをたてていたので、リアルDSは順風満帆でした。しかしその後、業界を震撼させる事件が勃発することになってしまうのです。次回記事に続く